研究者としてのあゆみ |
アスリート時代、私はスポーツ心理学に強い関心を持ちました。競技会でどのように実力を発揮できるか、その度に「メンタルタフネス(心理的な強さ)」の重要性を痛感しました。1999年に大学を卒業後、ミズノ株式会社に入社し、社会人アスリートとして活動しました。その中で「研究を通じてパフォーマンスの向上を目指したい」という強い意欲が芽生え、会社の内諾を得て、入社3年目の2002年に母校の中京大学大学院博士課程前期(修士課程)に進学しました。スポーツ心理学(スポーツ認知行動科学)の領域で研究を進め、特に競技会で実力を発揮するための心理的コンディショニングについて、自身が取り組んでいた円盤投とハンマー投に焦点を当てて研究しました。博士後期課程にも進学し、2006年に単位取得満期退学しました。
その後は競技活動に専念する期間が続きましたが、博士号の取得と教育・研究職に対する強い関心を持ち続けていました。2012年に競技を引退し、研究活動を本格的に再開しました。競技特性に着目した記録評価方法の研究を進める中で、日本アンチ・ドーピング機構のアスリート委員として、国民体育大会やJOCジュニアオリンピックカップなどでのアンチ・ドーピング啓発活動にも携わりました。この経験を通じて、世界的にもまだ研究が進んでいなかった「アンチ・ドーピング教育」に強い関心とミッションを抱くようになりました。
2016年には、再び博士課程に進学し、順天堂大学スポーツ健康科学研究科博士後期課程で研究領域を広げ、アンチ・ドーピング教育に関する研究を推進しました。博士課程では、「アンチ・ドーピング教育経験の回数がアンチ・ドーピングに関する知識にどの程度影響を与えるか」というテーマで研究を行いました。この研究では、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の eラーニングプログラムを活用し、そこで実施された知識評価テストを指標にしました。教育経験がないアスリート、1回の教育経験を持つアスリート、そして2回以上の教育経験を持つアスリートの3つのグループを比較し、教育経験回数が増えるほどアンチ・ドーピングに関する知識が向上することを明らかにしました。この結果は、アンチ・ドーピング教育の重要性とその有用性を示すものでした。この研究成果を国際ジャーナルに自ら投稿し、受理されました。本研究が博士論文として認められ、順天堂大学スポーツ健康科学研究科よりスポーツ健康科学博士の学位が授与されました。 |
順天堂大学大学院 修了式へ父・室伏重信と出席 |
スポーツ健康科学研究科博士後期課程の総代として、学位記を授与されました |
原著論文 |
本研究はオープンアクセスジャーナルSubstance Abuse Treatment, Prevention, and Policy(2017 Journal Impact Factor: 2.14)に2018年12月5日付で公開されました。 タイトル: Impact of anti-doping education and doping control experience on anti-doping knowledge in Japanese university athletes: a cross-sectional study 著者:Yuka Murofushi, Yujiro Kawata, Akari Kamimura, Masataka Hirosawa, Nobuto Shibata |
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現在は、順天堂大学スポーツ健康科学部および大学院スポーツ健康科学研究科で教育と研究指導に従事しています。また、科研費などの競争的資金を獲得し、研究のさらなる発展に努めるとともに、海外の研究者との共同研究も積極的に推進しています。原著論文の投稿や学術集会での発表を通じて、研究成果を広く発信し、今後もアンチ・ドーピング教育およびスポーツ健康科学の分野の発展に貢献していきます。 |
Sports Medicine Anti-Doping Laboratory |
学術集会・研究会への参加 |
体育・スポーツ系、医科学系、スポーツ心理学系の学会をはじめ、毎年国内外で行われる学術集会や研究会に参加し、研究発表や情報交換を行っています。学会の様子は写真ギャラリーでご覧いただけます。 |
執筆活動 |
執筆活動においては、医師やアスレチックトレーナーと共に教材テキストや医学系専門誌の連載、さらには新聞でのコラム連載の機会を頂いてきました。スポーツ外傷・障害や婦人科疾患など、多様な経験を事例として提供することもあります。これらの活動を通じて、より良いスポーツ医学とサポートの発展に貢献できるよう努めています。また、陸上競技マガジンでのアンチ・ドーピングやスポーツ心理学に関するコラム連載では、若いアスリートや指導者に向けたメッセージを発信してきました。 ライフワークとしては、愛猫とのエピソードを綴ったコラム連載や、自身の体験とエビデンスを組み合わせた医療・健康・スポーツに関するウェブコラムの執筆にも取り組んでいます。幅広い分野で執筆の機会に恵まれており、これからも多様なジャンルでの執筆活動を続けていきたいと考えています。 書籍等出版物の詳細情報は、以下のHPをご覧ください。 |
Researchmap |
近年の主なコラム執筆 |
陸上競技マガジン: 新・アスリートの「ココロ&カラダ」講座, 東京, 2023年3月~12月. (2022.06~2024.06まで隔月連載) |
ヨミードクター 室伏由佳のほっこりスポーツカフェへようこそ, 2016年4月~2017年12月.(隔月連載) |